本記事では、持続可能性を考慮した組込み開発の実現について解説します。
(※本内容は、イーソルの英語版Blogで9月に投稿した記事の日本語版です。)
昨今、組込みシステムや組込みデバイスの生産と運用の技術が用いるリソースは、ますます厳しい目を向けられるようになってきています。インテリジェントな産業用ロボット、自律走行車、スマートイメージング機器、高度な手術支援ロボットなど、手掛ける製品が何であれ、資源消費と持続可能性は組込み機器メーカーが取り組むべき課題となっています。特に、システムがソフトウェア駆動型になればなるほど、持続可能性の向上などを含む最適化の数多くの面で、組込みソフトウェアの役割は大きくなっています。したがって、ソフトウェア技術やエンジニアリングの正しい選択が、システムのエネルギー消費量の削減や効率性の向上につながり、製品の生産から廃棄までにかかる環境への負荷の低減を実現します。
エネルギー効率性
システムの機能全体において、ソフトウェアがベースとなる部分が占める割合はますます大きくなってきています。その結果、実行するコードが増え、それに対応するため多くの場合、より大きなプロセッサとより多くのメモリリソースが必要となります。これらはすべて、全体的な電力消費の上昇につながります。RTOSを使用すれば、電力消費を最小限に抑えながらソフトウェア機能のすべてを管理できます(例えば、必要のないときは機能を休止状態にできるスリープモードや高速スタートモードなど)。このような管理がなされるためには、信頼性の高い、適切にスケーリングできるRTOSが必要です。特定のターゲットハードウェアに合わせて、過剰に機能を揃えることがないようカスタマイズが可能でなければなりません。さらに、組込まれている省エネ機能が十分効果的に使用されるよう、適切に設定される必要があります。
集約と統合
先進のマルチコアRTOSは、マルチ・メニーコアプロセッサの実行効率を高め、さまざまな個別の制御ユニットを少数のコントローラに集約・統合することを可能にします。コンピューティングユニットの数が減るので、システムの全体的な省エネにもなります。さらに、チップ、ケース、コネクタ・配線など、ハードウェアの製造や使用も減らすことができます。これらすべてが、生産による環境負荷の軽減につながります。
マルチコアのスループットパフォーマンスの最適化
マルチコアハードウェアの場合、ソフトウェアをそのハードウェアが持つコア数に合わせて並列化する必要があります。並列性を高めることで、マルチコアシステムのパフォーマンスが向上すれば、より少ないCPUでより良い結果を得ることができ、消費電力も抑制できます。
プログラミング言語の最適化
コンピュータのプログラムは、コンパイルされて命令に変換されてから、メモリに配置され、CPUによって実行されます。この処理で消費される電気の量は、どのプログラミング言語が使用されたか、プログラムがどれくらい良く書けているかなど、数多くの要素に左右されます。興味深いことに、簡潔で直感的な表現に限定したプログラミング言語は、環境にも優しいようです。実行時間、エネルギー消費、ピーク時のメモリ使用量といった点において、C、Rust、およびC++は最も効率的なテクノロジーです。
低メモリフットプリント
メモリの使用量はエネルギー消費に影響します。低メモリフットプリントのRTOSを使用することは省エネにつながり、ひいてはシステムの持続可能性を高めます。
グリーンソフトウェアエンジニアリング
製品の機能や要件の中には、それが環境負荷全体に対してどのような意味を持つのか、慎重な検討を要するものがあります。エネルギー効率性やデータのサイズといったソフトウェアの環境要素は、計算や測定値の取得が可能です。そのため、使用するリソース、必要なプロセッサやメモリを余分に用意する必要もなくなります。したがって、エンジニアリングサイクルの段階で、機能の厳選を含め、徹底したプロダクトオーナーシップを実践する必要があります。
イーソルのOSによって持続可能性の向上を実現
このように、使用するソフトウェアによって組込み製品の環境への影響に大きな違いをもたらす可能性があります。その中でも、オペレーティングシステムの選定は重要です。イーソルの高性能でスケーラブルなRTOSプラットフォーム「eMCOS」は、持続可能なソフトウェア定義の組込みシステムを開発するための理想的なソフトウェアソリューションを提供します。その次世代のマルチカーネル設計は、マルチコアハードウェアに究極のパフォーマンスと最適な並列化をもたらし、コンピューティングの集約と統合に貢献します。eMCOSは、フットプリントが小さいことだけではなく、C、C++、Rustなどのプログラミング言語をサポートすることにより、メモリ使用量とエネルギー消費の最小化も実現します。そしてイーソルは、自動車、産業、家電分野での組込みシステムの開発実績に基づいて、イーソルのソフトウェア製品の最適な活用法について提案します。また、よりすぐれた製品の持続可能性を高めるための最適なソフトウェア設計を確実に選択できるよう、さまざまなアプローチも提案できます。
Laurent Mares,
Vice President Sales, International
About Laurent: Laurentは、複数の産業分野にわたり、複雑なソリューションの国際営業、マーケティング、サービス管理において30年以上の経験を有し、組込みテクノロジー市場についての知識を深めてきました。様々な企業で営業部門やマーケティング部門の管理職を務め、欧州やアジア/太平洋地域における営業やオペレーションを統括し、2019年9月にVice President of International Salesとしてイーソルに入社しました。 |