eSOL Marketing Official Blog

試作はLinux、量産はeSOLで。量産化の壁を突破するeSOLプラットフォームのススメ

2025/05/23 17:00:00

本ブログ記事では、試作フェーズで注目されるLinuxを量産製品へ適用する際の課題と、その解決アプローチについて解説します。

Linuxの活用が拡がる一方で、機能安全対応やリアルタイム性、コスト・サポート面での不安を感じている方に向けて、実践的な視点からポイントを整理します。

目次

 

1. 試作開発でLinuxが選ばれる理由 - Linuxがもたらす柔軟性とスピード

現在の開発現場では、機能や性能の高度化に加えて短納期というプレッシャーが強まっています。
開発手法も従来のウォーターフォールからアジャイルへ移行し、素早い試作と改善が求められています。
こうした背景から、ライセンス費用がかからず、豊富なOSS(オープンソフトウェア)を活用できるLinuxが注目されています。

短期間でのプロトタイピングが可能な点も大きなメリットです。
さらに、OSSの進化により画像処理やAI推論などの先端技術も利用しやすくなっており、YoctoやBuildrootなどのツールによって、組み込みLinuxの導入も簡単になっています。

Linuxの強みは、製品ごとに最適なカスタム環境を構築できる柔軟性と、OSSコミュニティによる技術革新への迅速な対応力にあります。
2024 State of Open Source Reportでも、OSSを採用する主な理由として「ライセンス費用がかからない/全体的なコスト削減」が最も多く挙げられ、次いで「開発速度を向上させる機能が利用可能」「長期的なコミュニティサポートによる安定性」「最新技術へのアクセス」「ベンダーロックインの回避」などが続きました。

このような理由から、Linuxは現代の開発ニーズに応える最適な選択肢の一つとなっており、特に試作段階における迅速な開発や技術検証を行う場面で、有効なプラットフォームとして選ばれる機会がますます増えています。

 

2. 商品化を阻む機能安全 / リアルタイム性 / サポート等の課題

ただし、Linuxを量産製品に適用しようとする際には、いくつかの課題が浮き彫りになります。試作段階では有効でも、実際の製品化に進む中で、次のような課題に直面するケースが少なくありません。

  • 機能安全への対応が難しい
  • 高負荷時の安定性やリアルタイム性の確保
  • 試作Linuxアプリ活用の課題
  • 費用に対する誤解とサポート体制への不安

Linuxは高機能なOSですが、機能安全への対応にはいくつか障壁があります。
たとえば、開発プロセスやトレーサビリティの不足、システム全体の検証の困難さ、決定論性の欠如、第三者認証の難しさなどが挙げられます。
また、高負荷時にリアルタイム性や安定性が低下しやすいことも重要な課題の一つです。

さらに、リアルタイムOSや機能安全認証済みのOSでは、試作段階で作成したLinuxアプリケーションの移植が必要になるケースもあります。
しかし、量産開発ではスケジュールが厳しく、こうした移植作業が納期や品質面のリスクになることがあります。

加えて、Linux自体は無償でも、商用開発にはライセンス費用や技術支援など多くのコストが発生します。

OSSの法的リスクやサポート体制の有無についても、事前にしっかり確認しておくことが重要です。

 

3. eSOLプラットフォームでの解決アプローチ

①機能安全への対応

機能安全の課題に対して、eSOLでは、リアルタイムOS、コンサルティング、エンジニアリングサービス、開発支援ツールなど、様々な側面からお客様の対応を支援する体制を整えています。

Blog_3-1


リアルタイムOSは、即時応答や高信頼性が求められる制御用途に強みがあり、自動車の安全制御や産業機械の緊急停止などに適しています。
一方、Linuxなどの汎用OSは、高精細な表示や多様な通信機能に優れています。
近年では、これらを組み合わせたハイブリッドアーキテクチャも増えており、安全性と快適なユーザー体験の両立が可能となっています。
このように、用途に応じた最適なOS選定が、機能安全対応において重要なポイントとなります。

Blog_3-2

 

②高負荷時の安定性やリアルタイム性の確保

eMCOSは、高負荷時でも安定したリアルタイム性能を実現するためにマルチカーネルアーキテクチャを採用しています。
これは、各CPUコアに必要最小限の機能を持つマイクロカーネルを配置し、POSIX準拠の機能やメモリ管理、デバイス制御といった高度なサービスをサーバースレッドとして別途実装する仕組みです。

Blog_3-2-1


これにより、複数のコアに処理を分散し、OS全体の並列性とリアルタイム性能が大きく向上します。
また、「メッセージパッシング」により、共有メモリを使わずにコア間でメッセージ通信を行うことで、高い並列性を確保しています。

Blog_3-2-2


従来のOSでは、複数コアで単一のカーネルを共有する構造のため、高負荷時にはコア間で競合が発生しやすいという課題がありました。
一方、 eMCOS はコア間の独立性が高く、システム全体の応答速度と安定性が大きく向上します。特に多コア・メニーコアプロセッサ環境では、この設計が性能を最大限に引き出すポイントとなります。

Blog_3-2-3

 

③Linuxで開発したアプリケーションの移行支援

eMCOSはPOSIX準拠のリアルタイムOSであり、PoCでLinux上に構築した資産を活かしながら、リアルタイムシステムへの展開が可能です。

Blog_3-3-1re

特に、POSIX APIを用いたアプリケーションは移植性が高く、既存の開発知見やコードを有効に活用できます。

Blog_3-3-2

一方で、POSIX外のLinux固有ライブラリを使用している場合は、移植の際に注意が必要です。

eMCOSは、Visual Studio CodeやEclipseなどの一般的な開発環境やCMake、LLVMをサポートしており、ベンダーロックを避けた柔軟な開発が可能です。
また、プロファイラやJTAGデバッグなどの解析機能も充実しており、CI/CDとの統合も容易なため、高品質かつスピーディな開発を実現できます。
さらに、eSOLは設計から運用までを支援するエンジニアリングサービスも提供しており、開発全体を強力にサポートします。

 
④コストやライセンス管理

eMCOS SDKは、OS本体に加え、ミドルウェア、ツール、デバッガを統合したオールインワンパッケージとして提供されており、開発者はLinux同様のコマンドライン環境でスムーズに作業できます。

ランタイムやサポート費用を含んだシンプルなライセンス体系により、コスト管理がしやすく、環境構築の負担も軽減されます。なお、量産時には別途ロイヤリティ契約が必要です。

また、すべてのライセンス情報が製品に付属しており、GPLなどソースコード公開義務のあるライセンスを含まない構成も可能です。
これにより、知的財産を保護しつつOSSの利点を活用でき、法的リスクを最小限に抑えた安心の開発環境を実現しています。


⑤国内開発・長期サポート・量産支援の安心体制

eSOLでは、国内開発ならではの手厚いサポート体制を整えています。開発から販売、サポートまでを一貫して自社で対応しており、ワンストップでの対応が可能です。
お客様の課題には、技術的な裏付けをもった丁寧な説明でお応えし、サポートチームと開発チームが密に連携することで、迅速な対応を図ります。
さらに、オプションで現地サポートにも対応しており、量産フェーズや運用段階においても手厚い支援が可能です。
サポートの延長としてエンジニアリングサービスも提供しており、技術的な課題の解決だけでなく、製品ライフサイクル全体を通じた安心なサポートを提供しています。

4. まとめ

それぞれの課題に対する解決アプローチ

■機能安全への対応が難しい
 → 機能安全対応OSの導入やコンサルティングサービスの利用
 →用途に応じて複数のOSを組み合わせるアプローチも有効

■高負荷時の安定性やリアルタイム性の確保
 → システムに必要な性能を見極めた上で、PREEMPT-RTパッチやリアルタイムOSの導入を検討

■試作Linuxアプリ活用の課題
 → POSIX準拠のリアルタイムOSで移植コストを最小限に抑える
 → エンジニアリングサービスの活用(移植、設計見直し、チューニング、etc...)

■コストやライセンス管理の不安
 → “無償だから安い”は必ずしも当てはまらない、有償の製品やサービスを上手に活用

■サポート体制への不安
 → eSOLでは、国内開発・長期サポート・量産支援を含む安心の体制で対応

 


本ブログ記事では、試作から量産までを見据えたLinux活用のポイントや、eSOLが提供するソリューションをご紹介しました。

実際の開発では、環境や要件に応じた個別の検討が必要になるケースも多くあります。 ご紹介した内容に関してご不明な点がある場合や、自社の開発課題に合わせたご相談をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

ビジネスマネジメント本部 技術営業部 M.I

🔰リアルタイムOS 初心者向け特集

リアルタイムOS(RTOS)の基礎を学ぶための動画・資料・ブログをまとめました
一覧ページを見る

最近の記事

ブログの更新通知を受け取る