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AUTOSAR車載ソフトウェア開発の新アプローチ ~Cエンジニアも採り入れるべきモデルベース開発 (MBD) とは?~〔前編:MBDのメリットなどを解説〕

2024/12/24 10:00:00

車載ソフトウェア開発の複雑化と開発期間短縮の要求が高まる中、効率的かつ安全な開発プロセスの確立が急務となっています。

Ansys社が提供するモデルベース開発環境「Ansys SCADE」は、直感的な操作でAUTOSAR (Classic Platform)に対応したコードとARXMLファイルの生成を可能にします。

そして、イーソルが提供するAUTOSAR準拠の車載プラットフォームソフトウェア「AUBIST」は、生成されたソフトウェアの実行環境を提供します。

これらのツールを組み合わせることで、C言語でのハンドコーディングからモデルベース開発まで、様々な開発スタイルに対応し、より効率的で品質の高い開発プロセスへの移行が容易になります。

今回のBlogでは、このソリューションの特長やメリットをご紹介する他、ソリューションの具体的な活用例として、インテリジェントヘッドランプシステムのデモンストレーションについてご紹介します。こちらのデモを通じて、AUTOSAR準拠のコード生成からECU実装までの一連のプロセスを分かりやすく説明します。

 
前編・後編と分けて本テーマを解説予定ですので、ぜひ最後までご覧ください。

前編となる本記事では、まずモデルベース開発 (MBD)とは何かという点と、前述したソリューションの概要をご紹介します。

 


目次

 

そもそもモデルベース開発 (MBD) とは?

モデルベース開発(MBD:Model Based Development)とは何かという点を説明するにあたって、読者の中には手書きコード開発の方が多くいらっしゃると思いますので、はじめにそのような皆様がお持ちであろうと考えられるソフト開発における課題を共有します。

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こちらは一般的な組込みソフト開発のワークフローを端的に表現したものですが、それぞれの工程にはエンジニアを悩ませる手書きコード開発ならではの難しさがあります。
ここに黄色で示しているものは、そういった難しさを抱える事象を抽出してグループ化し、発生する工程を線で結んだものです。

例えば、設計書からCコードを作り出す場面では、仕様書の要求に応えることができる最良のアルゴリズムを見つけ出し、効率の良いコードとして実装するというテクニックが必要になりますが、このような技術の中には形式知化することが難しいものがあります。
そういった技術は属人化してしまう傾向にあり、技術を持つエンジニアが会社から去ると同様の実装が難しくなる場合があります。

また別の例として、仕様書作成やコードのスタイリングを考えた場合、そういったものは特に個人の好みが分かれやすく、多様なベストプラクティスが存在します。
そのため全社統一が難しく、結果的に生産性向上の足かせになってしまっているというケースもあるのではないでしょうか。

ほかにも、現物(ハードウェア)を使うことが多いために装置導入の予算やスケジュールの影響を受けやすい、前工程の成果物への依存度が大きく待ち時間が発生しがちになる、といった難しさもあります。


モデルベース開発でこれらを丸ごと解決できるわけではありませんが、場合によっては大幅に楽になったり、新しいアイデアで工程の見直しができるようになったりする可能性を秘めています。


モデルベース開発とは、手書きコード開発で利用される、自然言語やC言語という自由度の高い記述法に代えて、モデリング言語という、記述ルールに制限を加えたものを使うことで、先述した問題を回避・軽減したり、新しいアプローチによって作業を丸ごと置き換えたりすることを可能にします。

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新しいアプローチとしてわかりやすいのは、モデリング言語を採用することで可能になったダイアグラムによる直観的な記述や、シミュレーションによる検証です。
他にもコード生成やモデルベーステストといったさまざまな機能がパッケージングされているのが、今日のMBDツールです。

ダイアグラムによる設計は、アルゴリズム開発をより直観的に進めたり、全体を見渡して全体的な構造を意識しながら進めたりすることを可能にします。
そこから先のCコードは、コードジェネレーターがあっという間に自動生成するため設計者はアルゴリズムの改善に専念できるようになります。

また、モデルベース開発の最大の特長であるシミュレーションは、任意の部分を動かして、迅速に、手間をかけずに検証することを可能にします。
再びバズワードになっているDevOpsも、モデルベース開発なら当たり前の機能として実践することができます。

Cコード開発の場合には、スタブやドライバーの準備から入力パターンの準備まで、すべてが手作業ということも多いため、シミュレーションはモデルベース開発の大きな差別化ポイントになっています。

他にも、モジュール化が促進されたり、それによって再利用化を進め易かったりと、多くエンジニアがその利点を実感しており、こういった一連の機能によってモデルベース開発は自動車業界を中心に大きく広がっています。

一方で、モデルベース開発についてよく出てくる声として、生成コードの安全性や、バグが作りこまれてしまうのではないかという不安があります。

実際、こうした不安の声を裏付けるような問題が生じているMBDツールは存在し、さらにひどい場合には、シミュレーションとは異なる振る舞いをするコードが生成されたり、バージョンが変わっただけでモデルの挙動が変わってしまうことを平然と仕様だと言ってユーザーに受け入れさせたりする状況があります。

このような信頼性の低いMBDツールでは、バックトゥーバックテストという莫大な工数を必要とする追加の検証をユーザーに押し付け、最終的には浮いた工数が帳消しになってしまうという事態を迎えることになります。

 

効率的かつ高品質な開発を実現する、モデルベース開発環境とAUTOSAR準拠プラットフォームを組み合わせたソリューション

Ansys社が提供するモデルベース開発環境「Ansys SCADE」は、前述のような予想外のコード生成や危険な記述に結びつく心配がない、形式言語を核とする、数理論理学によって支えられた信頼性の高いMBDツールです。

モデルの静的チェックやコード生成、シミュレーションの実現方式、クロスコンパイラー検証スイートなど、形式技術を基盤とするツールチェーンによって、コードレベルの検証を最小限で済ませられるワークフローを実現しています。

Ansys SCADEの開発プロセスは、あらゆるセーフティークリティカルな製品開発に耐えうる手法です。妥当性証明のために提供する認証キットというソリューションによって、お客様自身がとことん検証できるようになっています。

その結果、エアバスの旅客機や、ヨーロッパ全域で稼働する鉄道システム、原子力発電所といったセーフティークリティカルなシステム開発に標準ツールとして採用され、実際、Ansys SCADEから生成したそのままのコードが何十年もの間、一度もバグを起こすことなく稼働しています。

そして、Ansys SCADEで生成したコードをシームレスに動作させることができるAUTOSAR準拠のプラットフォームが、イーソルの提供する「AUBIST」です。
Classic PlatformおよびAdaptive PlatformのAUTOSAR準拠プラットフォームを、日本国内のベンダーがワンストップで提供します。


【AUBISTの特長】

  • 機能安全ASIL-Dプロセス準拠の車載量産品質
  • 必要な機能 (FC/Functional Cluster) をお客様の要望に合わせて提供
  • OEMの仕様への合わせ込みに柔軟に対応するエンジニアリングサービス


量産品質の製品とお客様の要望にきめ細かく対応できるエンジニアリングサービスの両輪で、AUTOSAR導入期のトレーニングやコンサルティングから量産後期の品質の作り込みに至るまで、トータルでお客様の開発をサポートします。

Ansys SCADEとAUBISTを組み合わせることで、効率的かつ高品質な車載ソフトウェア開発の実現が可能になります。

ソリューションの詳細およびメリットや、デモを交えた活用例は後編で詳しく紹介しますのでぜひご覧ください。

 

最後に

イーソルは、世界トップクラスの車載技術・豊富な車載経験を持つお客様達と共に培ったノウハウに基づき、幅広いご要望に応えるソリューションを提供します。

今回ご紹介したAUBIST製品の詳細は、以下資料からもご覧いただけます。

AUBIST製品資料ダウンロードはこちら

 

またその他にも、以下等の製品・サービスで車載ソフトウェア開発を強力に支援します。


ご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

オンライン無料相談はこちら


ビジネスマネジメント本部 技術営業部 T.K

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