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AUTOSARとは?生まれた背景や目的など、概要を解説

2021/04/26 10:00:00

技術革新が加速する自動車業界においては、車載ソフトウェアに求められる要求がますます高度なものとなっており、その開発は年々大規模化し難易度も高まっています。

今回は、そのような複雑化する車載ソフトウェア開発において重要な役割を担う、車載ソフトウェアプラットフォーム標準仕様の開発パートナーシップ「AUTOSAR(Automotive Open System Architecture)」の概要について解説します。

目次

1. AUTOSARが生まれた背景
2. AUTOSARによる標準化とは
3. AUTOSARの目的
4. 最後に

 




 



1. AUTOSARが生まれた背景

AUTOSARの概要に入る前に、まず近年の自動車業界の開発の現状について触れたいと思います。

ご存知の通り、近年は自動車の電子化が急速に進んでいます。車にECU(Electronic Control Unit)の搭載が始まった1980年代初頭は車1台あたり2~3個のECUが搭載される程度でしたが、現在では100個以上搭載されていることも珍しくありません。

現在の自動車開発では、新規開発の80%にソフトウェアが深く関与していると言われています。(*1)
自動車開発におけるソフトウェアの規模や重要性がますます大きくなっており、現在の自動車業界ではソフトウェア開発が主戦場となっています。

ソフトウェアへの重要度が高まっている現状において、新たな要求に対応するためにソフトウェア開発の規模は増大する一方です。
しかし開発人数を増やすことは難しく、仮に増やせたとしてもコミュニケーションには限界があり、人海戦術ではいずれ対処が難しくなります。

この問題を解決するためには、自動車業界全体が一丸となって取り組むことが必要です。過去のソフトウェア資産を有効活用することで、可能な限り開発コストを縮小させていくことが求められます。

その対処のカギとなるのが、過去のソフトウェア資産を「再利用」し、開発工程の「自動化」を進めること、およびその再利用や自動化を進めるために不可欠な「標準化」です。これらの実現を目的として、2003年にAUTOSARが発足しました。現在では、AUTOSARにはほぼ全ての自動車関連企業が参加しています。

AUTOSARは2008年頃から広く量産車に適用されており、現在は欧州での新規開発では殆どの場合に採用されています。日本国内の開発においても、採用する動きが活発化しています。

また、静的OS(OSEK/VDX OSベース)を用いた規格であるClassic Platform(CP)に加え、2017年には動的OS(POSIXベース)を用いたAdaptive Platform(AP)も公開されるなど、自動車開発においてAUTOSARの役割はますます重要なものとなっています。

 

2. AUTOSARによる標準化とは

では、AUTOSARによる「標準化」とはどういうことでしょうか。
従来の開発では、ハードウェアに応じてアプリケーションを大きく変える必要がありました。つまり、自動車メーカーが変わると、上に乗せるアプリケーションも合わせて変える必要があります。

しかし、アプリケーションとハードウェアの間にAUTOSARに準拠した車載ソフトウェアがあれば、ハードウェアに合わせてアプリケーションを変える必要がなくなります。それによってアプリケーションの再利用が可能になり、効率的な開発を実現することができます。これが、AUTOSARによるソフトウェアの標準化です。

autosar_kaihatsu


標準化によって、以下のようなメリットがあります。
・アプリケーション間(ECU内、ECU間)で通信プロトコルを意識せずに連携可能
・OEMとECUサプライヤの役割分担を明確化し、連携・分業しやすくなる

このようなメリットが、結果として車載ソフトウェアの開発工程の削減に繋がります。

 

3. AUTOSARの目的

AUTOSARでは目的を定めており、それらはAUTOSARのパートナーに加入する際の契約にも記載されています。その内容は随時見直されていますが、2020年に見直された現在の目的は以下となっています。(*2)

1. ソフトウェアの授受の支援
2. 異なるアーキテクチャやハードウェアのバリアントに対するスケラービリティの確保
3. 広い範囲のドメインへの対応(ドメイン非依存)
4. 自動車ソフトウェアにおける、オープンアーキテクチャの1つを定義
5. ディペンダブルシステム開発の支援
7. パートナー間のコラボレーションの実現
9. 適用可能な、自動車関連の国際規格や到達技術状況(state of the art)の技術への対応支援
10. Non AUTOSARシステムとのデータ交換への対応

(※6.8の番号が抜けているのは、見直しで前回から項目が削除されたためです。)

内容のポイントとして、AUTOSARの規格は、処理性能の限界を引き出すための個別最適化は含まれず、汎用性を相対的に重視したソフトウェアアーキテクチャとなっています。
また、高い汎用性を実現するために、BSW(Basic Software)の設定項目は非常に多く、全ては覚えられないためツールによる補助が不可欠です。

 

4. 最後に

いかがでしたでしょうか。
AUTOSARはすぐに狙った効果が得られるわけではないため、長期的視点が必要です。これは、「再利用」の効果を得ようとする場合全般に言えることでもあります。

AUTOSARを活用するためには、ただAUTOSARに従うだけでなく、AUTOSARを改善するための積極的な参加が必要になります。
そうしなければ、欧州にとって有利(日本にとって不利)な規格になってしまう可能性さえあります。

1章でご紹介した通り、自動車業界は今ソフトウェア開発が主戦場となっており、私たちイーソルのようなソフトウェアベンダが果たす役割はますます大きくなっています。

イーソルは、今回ご説明したAUTOSARに2016年からプレミアムメンバーとして仕様の策定に参画し、標準化活動に深く関与しています。

AUTOSARを導入したいが何から初めれば良いかわからない、AUTOSARについてさらに詳しく知りたいという方は、ぜひイーソルまでお問い合わせください。

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・関連サービス 資料

次回はAUTOSARの規格であるClassic Platform(CP)、Adaptive Platform(AP)について詳しく解説しますので、そちらもぜひご覧ください。

マーケティング室   S.A


(*1)
出展:黒川文子(2014)「自動車メーカーからの付加価値移転-車載ソフトウェアにおける標準化とネットワーク外部性の観点から-Vehicle Control Software -」
(*2)
出展:櫻井剛(2020)「AUTOSARの最新リリース「R19-11」とは(中編)」https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2002/25/news011_2.html