本記事では、eSOLが提供するリアルタイム3Dエンジン「eXRP」を活用し、産業向けのアプリケーションを開発した事例を紹介します。第2回となる本記事では、VR・MRを活用した3Dモデルビューアーの開発事例を取り上げます。
※第1回はこちら:「デジタルツインによるロボット操作システム~ゲームエンジンにROS 2を組み込んだVRアプリ~」
この記事でわかること
- リアルタイム3Dエンジン「eXRP」とは
- ゲームエンジンのグラフィック × マルチデバイス同期操作アプリの開発事例
- eXRP の開発事例から想定される応用例
はじめに
近年、モビリティ・ロボティクス・製造業などの産業領域において、ゲームエンジンの活用が急速に広がっています。そうしたゲームエンジンの中でも、いま特に注目を集めているのがオープンソースの「Godot」です。
「eXRP」は、そのGodotをベースに、eSOLの50年以上にわたる組込み開発の知見を活かして産業用途向けに強化したリアルタイム3Dエンジンです。
eXRP の詳細は、下記より製品ページをご覧ください。
開発事例|VR・MRを活用した3Dモデルビューアー
■ 開発概要
今回ご紹介するのは、VR(仮想現実)・MR(複合現実)を活用した3Dモデルビューアーです。
本デモでは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)とタブレットを使用し、実物の車両がなくても自動車のデザインイメージを共有できる環境を実現しています。
HMD用とタブレット用の2つのアプリケーションを用意しており、HMD用アプリケーションでは、操作パネルを使用して、VR・MRのモード切り替えや、自動車の色・向き・大きさを変更することができます。
- VRモード:朝・昼・夕・夜の4段階で明るさを変更して、影の表現やヘッドライトの路面反射などの確認が可能
- MRモード:現実世界に3Dモデルを重ねて表示可能
タブレット用アプリケーションの方では、HMD側で変更した自動車の色情報などが即座に同期され、その場にいない他のユーザーともイメージを共有できます。
■ 想定ユースケース
想定されるユースケースとしては、離れた拠点のメンバーや顧客に対して、デザインの説明やレビューを行う場面が挙げられます。実物を試作しなくても仮想空間上で見え方を確認できるため、試作コストを抑えられます。また、同じ3Dモデルを複数人で共有することで、関係者間の認識合わせや意思決定を素早く進められます。
さらに、 HMDを使えば展示会やショールームなどにおいてスペースが限られている場合でも、製品の実際の大きさやデザインを確認してもらうことができます。もちろん自動車に限らず、工業製品の設計・デザインのプロセス全般に応用可能です。
■ 技術要素
全体構成図
1.HMDでのVR・MR表示の切り替え
![]() |
![]() |
| VRモード | MRモード |
【機能・操作感】
自動車の3Dモデルの表示方法は、仮想空間の中に表示する「VRモード」と、現実の風景に重ねて表示する「MRモード」に対応しています。HMDを装着したユーザーは、コントローラー操作でこの2つの表示をシームレスに切り替えられます。
【eXRPを活用するメリット】
eXRPは、VR・MRの標準規格であるOpenXRに対応しています。そのため、外部プラグインや専用のSDKを別途導入することなく、標準で用意されている機能だけでVR/MR向けの開発を行うことができます。さらに、eXRPのベースであるGodotはOpenXRの動作検証を行うためのテストベッド(検証用プラットフォーム)として採用されており、最新のXR機能を早期に使用することができます。
2. HMDでのパネルUI
操作パネル
【機能・操作感】
ユーザーは右手から伸びるポインターで、左手の位置に表示された仮想操作パネルを操作することができます。操作パネルにはそれぞれの用途に応じたGUIパーツ(ボタン、スライダー、トグルスイッチなど)を配置することで、初めて使う人でも迷わず扱える、わかりやすい操作環境を実現しています。
【eXRPを活用するメリット】
このようにゲームで使われるようなポインターやGUIパーツによる直感的な操作を、そのまま産業用途のアプリに取り入れられるのは、ゲームエンジンならではの強みです。この操作パネルは、あらかじめ用意したアイコン画像をeXRPに取り込み、ボタンなどのパーツごとに割り当てることで構築しています。そのため、お客様が現在お使いの既存GUIのデザインをeXRP上で再現したり、より使いやすい形にアップデートしたりすることも可能です。こうして一度作成したパネルは「シーン」ファイルとして保存でき、他のプロジェクトでも再利用できるため、効率的に開発を進められます。
3. HMDとタブレットの同期
【機能】
HMDの操作パネルで選んだ色は、その場で自動車の3Dモデルに反映されると同時に、タブレット側にも即座に共有され、同じ色で表示されます。
一方で、自動車の向きや大きさはあえて同期していません。これにより、複数のメンバーがそれぞれ好きな角度や大きさで同時に確認できます。
このように、共有したい情報はリアルタイムに共有しつつ、各ユーザーの視点は自由に保つという柔軟な同期の仕組みによって、離れた拠点にいるユーザー間での認識合わせや意思決定の迅速化を実現します。
【eXRPを活用するメリット】
複数端末間でリアルタイムに同期する仕組みを短納期で実装できるのも、ゲームエンジンをベースにしたeXRPならではの強みです。
さらに、本同期機能の実装のように、eXRPではリアルタイム3Dエンジンの製品提供にとどまらず、関連機能や付随するアプリケーションの開発といったエンジニアリングサービスも併せて提供できます。eSOLが持つ豊富な知見を活かし、お客様が実現したいシステムの構築に向けて一貫したサポートが可能です。
■ 開発工数
- HMD用アプリケーション開発:約1人月
- タブレット用アプリケーション開発:約0.5人月
開発事例から想定される応用例
本事例は、以下のような用途への応用が想定できます。- 仮想空間を活用したデザイン検討
色・大きさだけでなく、形状・材質・可動部の動作確認などのプレビュー
明るさだけでなく、天候や場所などの周辺環境を変化させた場合の見え方の確認
自動車以外の工業製品(家電・産業機器・建材など)への展開 - 関係者間の共有・合意形成の迅速化
離れた拠点のメンバーや顧客とのリモートレビュー
プレゼンや商品説明での活用
試作前段階での認識合わせ
おわりに|ゲームエンジンを産業用途へ
ゲームエンジンGodotをベースとしたeXRPは、今回ご紹介した事例以外にも以下などを実現します。
- 産業機器や車載機器のGUI開発
- 実機と仮想空間を同期させるデジタルツイン開発
- 制御・検証・教育用途のシミュレーション環境開発
このような技術活用や類似システムの実現にご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
ご相談内容例:
- 組込みシステムと連携したシミュレーション環境構築
- 産業機器や車載機器のGUI改善
- eXRP を活用したPoC・デモ開発
- その他、ゲームエンジンの産業用途への導入検討
関連記事
- その他のeXRP活用事例の一覧はこちら
Entertainment課 R.S



